梅に関する言い伝え

 仁木町の、主として古老の間に言い伝えられているいろいろな俚言[りげん](ことわざ)などを収集していたら、その中に梅に関係するものがたくさんあるのに気がついた。

・梅の花が早く咲くと、実がならない。
・梅や桜の花が横向きに咲けば風、下向きに咲けば雨、上むいて咲けば晴。
・梅の実がたくさんあった年は麦作がよい。
・梅と桜を両手にもつ。
・散るは桜、香るは梅。
・桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿。
・梅干と言えば唾が溜まる。
・朝茶に梅干一日の災難のがれ。
・梅干を食うと、一日中喉が渇かない。
・梅干を朝食べると福を招く。
・梅干を握りめしの中に入れておくとスエない。
・梅干と友達は、古い程よい。
・梅酢(梅漬の汁)は腹の薬
・梅酢を常用すると、暑気にかからない。
・梅干はコレラの妙薬。
・梅干をヘソの上に当てて置くと、乗物に酔わない。
・梅干の皮をコメカミに貼ると頭痛が治る。
・梅干の黒焼きに熱い湯をかけて飲むと、引カゼが治る。
・梅干は避妊によい。
・梅漬けが腐ったり、色が変わったりすると、不吉なことがある。
・梅干と味噌をいっしょに食うな。
・梅干を夜食べると渇きを招く。
・梅干を夜食べると、毛穴がふさがる。
・梅干を夜食べると、恐ろしい夢を見る。

 梅は、奈良時代の初め頃、中国から伝来したが、その中国では酸っぱい梅はあまり好まれなく、砂糖づけにして使うくらいであるという。

 ところが我国では「梅漬け」の方法を知り「梅干」を完成した。

 一千年に余る永い経験から、梅のもっている防腐や殺菌などの薬物効果を知って、これを保健食品として常用してきたのである。

 梅に関する”俚言”も、この間に生まれ育ち、今日まで言い伝えられてきたもので、今更のごとく先人の知恵に、ただ頭が下がるばかりである。

梅の花、仁木町内では桜よりやや早く咲く

出典:図書「ふるさと再発見」久保武夫 著, 仁木町教育委員会発行1991(H3).3, p46-47: 17梅に関する言い伝え --- 初出: 仁木町広報1982(S57).12

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