わが仁木町では古くからこんな言い伝えがある。ところで近年大然別沢ぞいに林道が開削されたが、その支流通称アメマス川づたいの林道取りつけのため崖の一部を削り取ったところから貝の化石層が露出した。
ここは然別駅から南西4kmばかり距たったところにあるアメマス川の谷で、あたりは自然林の生い茂った海抜500 - 600kmにおよぶ山々に取り囲まれた全くの谷底である。
貝の化石は砂や小石が固まってできた堅い砂岩や礫[れき]岩の層の中に幾重にもつみかさなっている。
タガネなどではがして見ると化石は二枚貝で一見、ホタテ貝の一種らしく、その大きさは径5 - 8cm位のものが大部分で、今のところその他の化石は見当たらない。
さて、余市海岸から10数kmも離れているこの山中にどうして海棲の貝の化石が出るのであろうか。
元来、この付近一帯は海に覆われていたところであったが、今から千数百万年以前(新第三紀の中ごろ)に激しい海底火山が起こって、そこから大量の熔岩や火山灰などが次から次へと噴出し、それらが海底に厚く堆積していった。
その後、火山活動は一時おさまり、静かさをとりもどした浅い海には魚貝類がおびただしく繁殖したようである。
ところで海底に堆積した火山噴出物は長い間に緑色凝灰岩と呼ばれている青っぽい岩盤になっていったが、次の時代にはここに地殻変動が起こって、海底はどんどん上昇し遂に陸地となった。
その陸上は再び火山活動が活発になり、五剣山あたりから然別山を経て八内岳の麓に至る現在の山々が出来上がっていった。
ホタテ貝の一種であると思われる二枚貝の化石は、この様な複雑な地変をへて然別の山中に長い間眠っていたのである。
これは然別川付近の地形や地質そして貝化石を含んでいる岩質や、それらの堆積状態の観察から得た推論である。
なお、貝化石の学名などを知るために道開拓記念館に鑑定を依頼してあるがまだ結論は出ていない。
然別川の奥から出た貝化石(仁木町教育委員会保管) |
出典:図書「ふるさと再発見」久保武夫 著, 仁木町教育委員会発行1991(H3).3, p36-37: 12:然別川から出た貝化石 --- 初出: 仁木町広報1982(S57).7
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