・スミレ
道端や畑の隅に春から夏にかけてうす紫の花をつけるスミレ。この花を抜いて花首の曲がりを互いに組み合わせて引っぱりあい、傷ついた方を負けとする。1人でも遊べるし2人か3人で勝負するとなお面白い。いつ誰が名づけたかわからないが、この花を相撲とり花と呼んでいた。
・オオバコ
オオバコの花梗の太くてよく伸びたのを選んで引きぬき、2つに曲げ、その折れ目あたりを軽くつぶすと強い繊維[すじ]が数本あらわれる。同様にして作った相手のそれに引っかけて互いに引き合い、切れた方が負け。買った方は相手をかえて何度でも勝負を競うことができる。相撲とり花遊びより面白い。
・ヨブスマソウ
ヨブスマ草は日陰や谷間に生えている。茎は高さ2m前後の中空でフシがない。これを1mくらいに両端を切り、細い方を斜めにそいで、そこに口を当てて吹くとラッパのように鳴る。いろいろ音色を変えて友人と吹き合い初秋の山遊びを楽しんだ。
・雑木類
どんな木でもよい。長さ10cmくらいに輪切りにし、その一端を削ってコマ形にする。手頃の棒きれに長さ50cm程のしなやかなヒモをつけたムチでこれを廻し、回転が鈍らぬようにコマの横側にムチをふるって廻し続ける。桜や栗の木で作ったのがよく廻る。名づけてシバキゴマ。
・クルミ
山グルミの木の新梢で真っすぐにのびたのがよい。50cmくらいに両端を切り、木槌などで表皮をまんべんなく軽く叩く。頃合いをみて木質部を引き抜くと表皮は筒状に残る。これで鞘つきの木刀になり腰に差して戦争[いくさ]ごっこ。
・根曲がり竹(チシマザサ)
笹の葉はささ笛やささ舟、その茎は竹笛、紙鉄砲、弓など作ったが、男の子が好んだのが弓である。弓作りにはまず、腰が強くて曲がり具合がよい竹を選んだ。弦[つる]は大麻の皮をはいでこしらえた麻縄を張り、弓の矢はヨシや油ガヤの茎を乾かして使い、時にはガマの穂を空に向けて飛ばし、鏑矢[かぶらや]だと言って喜んだ。
こんな遊びの中で、怪我もしばしばあった。すり傷、切傷、鼻血など………。
しかし子供らは早速ヨモギの葉を採ってきてこれに対処した。青い汁がでるまでよく揉んだのを傷口に当て、手拭を裂いて包帯した。鼻血にはこれを丸めて鼻の穴に栓をした。これでたいてい血は止まり傷口は癒えた。
子供らはこうした遊びの中で、知らず知らずの間に草や木の名を覚え、その特性を知り、村内に生育している植物の分布状態まで身につけていたのであった。
出典:図書「ふるさと再発見」久保武夫 著, 仁木町教育委員会発行1991(H3).3, p114-115: 46相撲とり花 --- 初出: 仁木町広報1985(S60).10
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