現在我が国には100歳以上の長寿者が4,000人をこえるという。
「人生50年」と、長いあいだ言い伝えられてきた我が国の平均寿命も、戦後急速に伸び続け、今や世界一の長寿国にのしあがってきた。
仁木町でも今年(平成5年)、大久保秋太郎氏と並んで久道ひさよさんが満100歳を迎えられたが、仁木町はじまって以来のことである。なお嶋田浪太郎(京極慶和園、98歳)、辻田道太郎(97歳)、大内ツル(98歳)の各氏がこれに続いており、90歳以上の高齢者が20名近くにも及んでいる。
仁木町教育委員会では数年前から町内在住の古老の方々を随時訪問して、開拓時代からの体験談や趣味や嗜好などいろいろと伺い、時には貴重な絵図や書き物の類や写真、それに家宝とされている物品などにも手を触れさせてもらいながら、その「聞き取り調査」をすすめ、仁木町 100年の生きた歴史の断片を探し集めつつある。
これら古老の人たちは、誕生して間もなく日清戦争、10歳前後で日露戦争、そして日本の資本主義の進展とともに第一次世界大戦、シベリア出兵、満州事変、支那事変から太平洋戦争へとつづき、そして敗戦の苦杯をなめながら経済大国と呼ばれる現在まで、その一生は身を以って戦争の歴史を生き抜いてきたと言っても過言ではない。
彼らは自分らの手で開いた郷土の自然や生活環境にとけこみながら、なにより勤労を尊び、人を信じ、そしてたがいに愛しあいつつ、今日の平安を得るに至ったようである。
その趣味や嗜好などもたずねてみた。話好き、世話好き、愚痴を言わない、くよくよしないなどが多く、食べ物に好き嫌いがほとんどなく、酒や煙草よりもお茶好きが一番多かった。中には「お茶は薬」と考えている嫗もいた。そう言えばお茶は3,000年も前から中国で飲用されており、最初は解毒薬として使われたという。日本には9世紀初めに伝えられたが、鎌倉時代のはじめ栄西禅師が源実朝のために『喫茶養生記』を著し、「茶は養生の仙薬なり」と述べて、茶が健康のためにすばらしい薬であると、その効用を広めた。
現代の医学でも、茶が活発に動き廻るコレラ菌を瞬時に止めることが発見され、腹管や呼吸器及び皮膚の感染症など、多くの病原菌を殺菌し、それが出す毒素を解毒する。またウイルスにも作用してインフルエンザの感染を防ぐことができる(昭和大学島村忠勝氏)という。
今、お茶がブームである。飲むばかりでなくふりかけて食べる茶まで出廻っている。
因みに日本は今、「暖衣飽食を貪り、拝金主義に墜し、似て非なる平和に酔い痴れて、その役を果たそうとしていない」とも言われている。
がこれを癒す仙薬は見つからないものであろうか。
出典:図書「続・ふるさと再発見」久保武夫 著, 仁木町教育委員会発行1997(H9).12, p58-59: 17人生80年 --- 初出: 仁木町広報1993(H5).3
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