余市川流域の温泉

 近年、余市川の流域には相次いで温泉が発見されている。

 10数年前、余市町茂入山上のボーリングで温泉の兆候が認められたが、それから数年後には茂入山の南麓の河口付近に余市川温泉が湧出した。また、それに程近い浜中町丘陵上の畑地にも温泉の掘削が進められているし、ごく最近では大川町大浜中の国道筋に近い砂丘上にも、偶然温泉を掘り当て話題を賑わせている。やや離れているがフゴッペ川奥の山峡にも以前から温泉場がある。

 こうした温泉の湧出は、余市町内だけではない。古くは赤井川村に知られていたし、近年になってから仁木町でも数カ所ボーリングして温泉の可能性を確かめ得た。

 余市川の上流、赤井川村落合には「湯ノ沢」と呼ばれている小谷がある。アイヌ時代から知られていた自然のいで湯で、昔この付近に入植した人々は、露天風呂に入ったり立腫病に利くとて、馬の脚をこの湯で湿布したとも伝えられている。また、赤井川盆地内では北丸山の南麓に早くから温泉が発見されているし、最近は盆地のほぼ中央部に相当高温な温泉を掘り当て有望視されている。

 仁木町では、砥の川の角の沢入口とその奥にそれぞれボーリングされた。今一歩のところで中断されているが、温泉湧出の可能性はあると言われている。なお温泉として掘削したのではないが、然別の大江鉱山の坑道内にも相当量の温水が湧き出しているという。

 試みにそれらの温泉の位置を五万分の一地図上に丸印で点々と落としてみると、余市川の流域に温泉が群れをつくっている状態がわかる。

 一般にその土地の平均気温より高い温度の水が地中から自然に湧きだしてくるものを温泉と呼んでいる。これは地下の溶岩だまりから高温のガスや湯が岩の割れ目に沿って上がってきて地表近くで数十倍の地下水と混合して出てくるものである。

 余市川流域一帯にも火山が活動した時代があった。その中心は赤井川盆地で、もとは富士山型の火山であったらしいが数万年前の噴火で陥没し、大火口(カルデラ)が形成された。続いてその中に北丸山と呼ばれている中央火口丘が噴出して現在の姿になった。

 この赤井川盆地を半円状にとり巻いている余市川も、古い火山活動によって生成した断層の谷底を流れ下っている。

 余市川流域の地下深所には、新旧の火山活動によって生じた大小の亀裂が縦横に走り、その下に潜んでいる溶岩だまりからの高熱をうけた温水が岩の割れ目を伝わって湧き出してくる可能性は十分にある。従っていつどこに温泉が出ても不思議ではない。

 余市川の流域はそうした地体構造をもっているところである。

出典:図書「ふるさと再発見」久保武夫 著, 仁木町教育委員会発行1991(H3).3, p92-93: 38余市川流域の温泉 --- 初出: 仁木町広報1984(S59).11

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